---topics:イコール式、rounddown関数---

其ノ1 税込計算を検証する

ハイ、Excel四十八手、基礎編の其ノ1です。
今回から、Excelで仕事をする上で押さえておきたい内容を、章立て形式で少しずつ練習していきます。 脱エク弱!編よりは内容がもう少し実戦的になってますので、不安な方は脱エク弱!編と行きつ戻りつしながら読み進めてみてください。

というわけで、本日の課題は「税込計算を検証する」です。
ところで、消費税率って、今何%ですか?
…執筆時(2015/11)の消費税率は8%です。 まあ、もしかしたら、みなさんが読んでる現在では変わってるかもしれないけど…。
で、ここで、こんなふうに想定してほしいんです。

お客さまからデータをいただいた。
そこには、税抜き価格と、税込価格がすでに入力されている。
でもね、ここに入力されている税込価格、ホントに正しいのかな?


これを調査したいんです。
例えば次のデータ。 ダウンロードお願いします。

開くとこんなふうに↓なってます※1

kiso01_zeikomikeisan.xlsx
※1 kiso01_zeikomikeisan.xlsx

すでに税抜価格と「税込価格」(紫フォント)が入っていますね。 ですが、この「税込価格」が、ホントに税抜価格×1.08になっているのかな?ってのを調べたいんですよ。 つまりね、

  1. 税抜価格×1.08を再計算する
  2. 「元々あった税込価格」と、「計算し直した税込価格」を、比較する

ってことをしたいな、と※2

作業見取り図
※2 作業見取り図

図にするとけっこう複雑に見えちゃいますが(笑)、やりたいことはこんな感じです。 本日のミッション、ご理解いただけましたでしょうか。
では、さっそくやってみましょう。

×1.08を計算する

ではまず、E列に見出しをつくりましょう。 「税抜価格×1.08」って名前にしときますか※3

新規列作成
※3 新規列作成

ではここに、税抜価格×1.08の計算結果を入れていきましょう。
…まず1個目の商品。 「税価格」はC2セルだから…、式は、こうなりますよね※4

=C2*1.08
※4 =C2*1.08

かけ算には「*(アスタリスク)」を使うんでしたね。 覚えてましたか? 不安な方は、エク弱編の第6章をもう一度読んでみてくださいね。

計算結果は、こうなります※5

税抜価格×1.08が計算された
※5 税抜価格×1.08が計算された

お。 なんか、ちゃんと計算できてるっぽい雰囲気ですね。
では、できましたら、今入れた式をコピーして、おしりまで貼り付けしてください※6 ※7 ※8 ※9 ※10

式をコピーして…
※6 式をコピーして…
あたまから…
※7 あたまから…
おしりまで選択して…
※8 おしりまで選択して…
貼り付ける
※9 貼り付ける
おしりまで計算結果が出た
※10 おしりまで計算結果が出た

コピー→貼り付け、できましたでしょうか。
ではちょっと、この状態で、Excelを眺めてみてください。
僕らが最初に入れた式は、「C2*1.08」でした。 そりゃそうですよね、1コ目(No1)の商品の税抜価格「9800」の税計算がしたかったのだから。 でも、次の行では、ちゃーんと「C3*1.08」になっています※11
もちろんその次の行は「C4*1.08」に。 その後C5、C6…となっていきます。
こんなふうに、Excelは、式をコピーすると、気を利かせてくれる、というか、自動的に参照を調節してくれるんです。
このことは、ちょっと覚えておいてください。

次の行ではC3*1.08に調節されている
※11 次の行ではC3*1.08に調節されている

ということで、とりあえず×1.08の計算はできました。

小数点以下を切り捨てる

さて、計算はできたんですけど、…みなさんお気づきの通り、端数※12がでてますね…。

小数点以下がある
※12 小数点以下がある

みなさん、お店で買うとき、「7711.2円で~す」なんてこと、ないですよね。 価格は整数です。 なので、小数点以下の値について処理をしてあげないといけません。
小数点以下の3大処理の仕方と言えば、みなさんご存知のとおり、「四捨五入」「切り上げ」「切り捨て」ですね(業界によっては「五捨六入」とかもあるらしいけど…あくまでメジャーなのはこの3つ)。 で、小売りの世界では、「四捨五入」はまず使いません。 「切り上げ」か「切り捨て」です。 しかも、たいていのお店は「切り捨て」です。 でも、たま~に「切り上げ」のところもあるので、事前にそこのルールを確認する必要があります。
さて、今回のルールは「切り捨て」です。 なので、もう1列使って、切り捨ての計算をすることにしましょう※13

小数点以下切り捨ての計算をします
※13 小数点以下切り捨ての計算をします

ここに切り捨ての関数を入れていく予定なんですが、切り捨ての関数を覚えるついでに、せっかくなので「四捨五入」「切り上げ」も一緒に覚えちゃいましょう! 「四捨五入」「切り上げ」「切り捨て」の関数はこんな↓です。

・四捨五入 =round( , 小数第何位まで?)
・切り上げ =roundup( , 小数第何位まで?)
・切り捨て =rounddown( , 小数第何位まで?)

関数的にはこの3つ、兄弟みたいなもので。 式のつくりもそっくりですね。
しかも、「切り上げ」だったら「roundup」、「切り捨て」だったら「rounddown」ということで、覚えやすい。 また、「round」って英語も「丸める」って意味です。 なので、3つセットで覚えてください。

かっこ()の中のつくりもおんなじですね。
「値」っていうのは、四捨五入したり切り上げしたりする元の値のこと。
「少数第何位まで?」は、小数点以下を何ケタまで表示するかの指定です。 「1」とか「2」とか整数を入れて指定します。
例えば、元の値が「123.45」だとして、四捨五入(round)処理をする。 このとき、「少数第何位まで?」のところを「1」とすると、結果は「123.5」となります(123.45の「5」が四捨五入されるので)。
また、「0(ゼロ)」を指定してやると、「123」となります(123.45の「4」が四捨五入され、整数になる)。 これ重要。

ためしにちょっと、やってみますか。 実は、round系関数の練習用にシートを用意しています。 「round関数」という名前のシートを見てください※14

round系関数の練習シート
※14 round系関数の練習シート

ここでは、練習として、サンプルの数字(123.45)を四捨五入/切り捨て/切り上げしてみたいと思います。 上段は小数点第一位まで、下段は整数にしますよ。

ではまず、四捨五入から。 四捨五入では「round」を使うんでしたね。
ということで、=round(と入力します※15。 アタマのかっこ(までですよ。

=round(
※15 =round(

アタマのかっこ(まで入れたら、四捨五入したい元の値、この場合だとB3セルを選択します※16。 マウスで選択しても、矢印キーで移動してもOKですよ。

元の値を選択
※16 元の値を選択

セルを選択したら、,(半角カンマ)で区切ってください。 ナビゲーションが次の引数に移動します。
で、われわれが求めているのは小数点第一位までですので、1を入力します※17

小数点第一位まで
※17 小数点第一位まで

かっこを閉じれば完成です※18 ※19。 四捨五入できました。

かっこを閉じるのを忘れない
※18 かっこを閉じるのを忘れない
四捨五入できた
※19 四捨五入できた

ちゃんと123.45の「5」が四捨五入され、小数点第一位までの値になりましたね。 round関数はこんなふうに使います。

では、切り捨て/切り上げも同様にやりましょう。 切り捨てはrounddownを使うんでしたね※20 ※21

rounddown関数
※20 rounddown関数
切り捨てできた
※21 切り捨てできた

切り上げはroundupです※22 ※23

ちなみに、「ラウンドアップ」って名前の有名な除草剤があります。
※22 ちなみに、「ラウンドアップ」って名前の有名な除草剤があります。
切り上げ完了
※23 切り上げ完了

round系関数の使い方、なんとなくわかりました?
では今度は、小数点第一位までではなくて、整数にしてみましょう。 整数にするには、2番目の引数、さきほどは「1」を入れたところを、「0(ゼロ)」にするんですよ※24 ※25

2番目の引数に「0」を指定
※24 2番目の引数に「0」を指定
整数になった これ大事
※25 整数になった これ大事

いかがでしょうか。 なんとなくつかめましたでしょうか。 まあ、不安だと言う人は、何度も繰り返しやれば良いんです。 われわれは誰とも競争していませんし、自分のペースでやれば良いんですよ。

というわけで、とりあえず「わかった」という人もそうでない人もいるかと思いますが、ひとまず先へ進みましょうか。 進んでいくうちに理解が追いついてくることもありますし。
ということで、元のシート(税込計算)に戻ってください※26

税込計算シートに戻ってきた
※26 税込計算シートに戻ってきた

では、さきほど計算した値に対して、切り捨て計算をやっていきましょう。
F2セルに=rounddown(と入れて…※27

=rounddown(として…
※27 =rounddown(として…

「値」のところは、さきほど計算した税抜価格*1.08の値、つまりE2セルを選択します※28

E2を選択する
※28 E2を選択する

われわれが求めているのは整数なので、第2引数は「0」を指定します※29
んで、かっこを閉じて、完成です※30

求めるのは整数 なので0を指定
※29 求めるのは整数 なので0を指定
できた
※30 できた

rounddown関数、入れることができました。
…うん、ここは元々端数がなかったので、違いがよくわからないですね。
なので、この式をコピーして、おしりまで入れてみましょう。 すると、rounddown関数の効果がよくわかります※31 ※32

式をおしりまでコピー
※31 式をおしりまでコピー
端数がなくなった
※32 端数がなくなった

元々「7711.2」とかだったのが、ちゃんと端数が切り捨てられて「7711」になってますね。 確認しておいてください。

さあ! あとは、D列とF列を比較するだけ!です。

イコール式

さて、われわれが調べたいのは、「元々あった税込価格」が合っているか、です。 なので、「元々あった税込価格」を、「計算し直した税込価格」と比較してやらねばなりません※33

D2とF2がイコールか
※33 D2とF2がイコールか

ここで、「D2とF2はイコールか?」「D3とF3はイコールか?」「D4とF4は…?」……と、ずーっと上から下まで目で検査していっても良いのですが(笑)、それだと途方に暮れちゃうので、式を使ってやりましょうか。
さっそくやってみましょう。 まず、となりの列に見出しを作ります。 さしあたり「税込計算OK?」とでもしましょうか※34

税込計算OK?
※34 税込計算OK?

で、式を入れていきます。
今から使う式は、イコールと()かっこしか使わないので、「イコール式」と僕が勝手に呼んでます。 僕が勝手にそう呼んでるだけなので、他所でこの呼び名は通用しないと思います、たぶん。 ですが、使える式なので、覚えておいてください。
さて、使い方は、まず、=(と入れます※35。 今回は、「sum」とか「rounddown」とか、関数の決まり文句的なものはナシで、いきなり(かっこから始まりますよ。

イコール式を使う =(と入れて…
※35 イコール式を使う =(と入れて…

そうしたら、D2セルを選択します※36。 比較したいのは「D2」と「F2」ですので、そのためにまずD2を選択するんですよ。

D2を選択
※36 D2を選択

次に、もう一回=(イコール)を入れます※37。 イコールはもちろん半角ですよ。

=(半角イコール)を入れる
※37 =(半角イコール)を入れる

で、今度は、F2セルを選択します※38

今度はF2を選択
※38 今度はF2を選択

かっこを閉じて、できあがりです※39 ※40

かっこを閉じれば式が完成
※39 かっこを閉じれば式が完成
Trueが返される
※40 Trueが返される

式、入れられました?
われわれが入れた式は、「=(D2=F2)」というものです。 これは、「D2セルF2セルはイコールですか?」という意味になります。
D2セルもF2セルも、値は同じ「10584」ですので、答えはTrueです。
Trueとは「真」、つまり「正しい」という意味です。 イコール式の場合ですと、「Yes!イコールです!」ということです。
もしその反対に「ダメ!イコールじゃないです!」という場合は、Falseが返ります。
False、「偽」「正しくない」という意味で、読み方は「フォルス」です。 「ファルス」じゃありません(ファルスだと「男根」という意味になっちゃいます…。女性は気を付けましょう)のでご注意を。

せっかくだから、イコール式についても、ちょっと練習しましょうか。
「イコール式」という名前のシートを見に行ってください※41

イコール式の練習問題
※41 イコール式の練習問題

イコール式の練習問題です。 ここを使って、イコール式の特性を学んでいきましょう。

というわけで、隣り合ったセルを比較していきます。 まずはB3とC3。 「123」と「84」だから、結果は…※42 ※43

123と84はイコールですか?という式なので、結果は当然…
※42 123と84はイコールですか?という式なので、結果は当然…
Falseになる
※43 Falseになる

答えは当然「False」になります。 そりゃそうですよね、イコールじゃないですもんね。

次行きましょう。
B4とC4の比較です。 式を入れなおしても良いのですが、上の式をコピってもOKですよ。
さて、=(B4=C4)の結果は、両セルとも「45」なので当然…※44

B4とC4はイコールなので、True
※44 B4とC4はイコールなので、True

答えはTrueです。 アーユーオケイ?

<余談ですが…>
筆者はイコール式を()かっこ付きで紹介していますが、実は=B3=C3のように、()かっこなしでも機能します。 …ですが、かっこなしはイマイチ見た目がよろしくありません。 また、かっこなしだと、「この式はいったいどういう意味なのか」が不明瞭になってしまいます。 なので、イコール式はできるだけかっこありで使うようにしましょう。
…まあ、このあたりはセンスですね。

次。 どんどん行きます。 なので、ジャンジャン式をコピってください。
次は、両セルとも「0(ゼロ)」の場合です※45

0=0 不思議なことは何もない
※45 0=0 不思議なことは何もない

これももちろんTrueです。

不思議なのが、次の行。 「0(ゼロ)」と空白セルをイコール式で比較すると…※46

0と空白はイコールになる
※46 0と空白はイコールになる

答えはTrueになります。
実は、何も入力されてない空白のセルは、Excel的には「0(ゼロ)」と同じ扱いなんですよ※47。 なので両者はイコールとなります。

空のセルはゼロ扱い
※47 空のセルはゼロ扱い

ただし、ゼロとして扱われるのは、完全に空のセルだけです。 見た目は空白でも、「 (←スペース)」が入っていたりするとダメです。

さて。 イコール式は文字も比較することができます※48

文字の比較
※48 文字の比較

「あああ」と「あああ」は当然イコールです。
「あああ」と「あいう」はもちろんイコールじゃありません。

問題なのがその次。 式を入れると…※49

あれ?Falseだ…
※49 あれ?Falseだ…

あれ? Falseになった…。
実は、右の(C9セルの)「あああ 」は、おしりに空白スペースが入っているんですよ※50。 ダブルクリックでセル内に入って確かめてみてください。 右のヤツにはスペースが含まれています。
このように、外からの見た目は同じでも、スペースのある/なしで差異が出ちゃうんですね。 覚えておきましょう。

スペースのある/なしで異なる
※50 スペースのある/なしで異なる

最後。
両セルは同じ「1」ですが、実は書式が違います。 左(B10)は標準、右(C10)は文字列です。 実はイコール式では、文字列と数値は別物扱いなんです※51
なので結果はFalseになります※52

C10は書式:文字列 右クリックで確かめてみよう
※51 C10は書式:文字列 右クリックで確かめてみよう
書式:標準と文字列は違う
※52 書式:標準と文字列は違う

…イコール式についてはこんな感じです。 細かい特性まで解説してしまいましたが、とりあえず、「2つのセルがイコールかどうかを調べる式だ」ということが理解できればOKですよ。

…では、元のシートに戻りましょう※53

戻ってきた
※53 戻ってきた

さて、われわれはD列の結果とF列の結果がイコールかどうかを調べてたんでしたね。 なので、イコール式をおしりまで入れてやりましょう※54
もし、イコール式でおしりまで調査して、どこかに「False」があったら…。
そこが「まちがい」のところになりますよね。

というわけなので、イコール式を、おしりまでコピーしますよ。

イコール式をおしりまでコピーした
※54 イコール式をおしりまでコピーした

コピーできました?
式をコピーすると、セルの参照が調節されていって、上から、
=(D2=F2)
=(D3=F3)
=(D4=F4)



=(D140=F140)
となってますよね。 確認しておいてください。
で、この中から「False」のところを探すわけです。

で、まあ、目で探しても良いんだけど(笑)、もうちょっと楽に、フィルタを使って探すことにしましょう。
なので、まず、データ→フィルタから、フィルタをかけ直してください※55 ※56
現状、中途半端にD列までしかフィルタがかかってないので、かけ直さないといけないのですよ。 なので、一度フィルタを解除して、もう一度かけ直す感じで。

フィルタをかけ直す
※55 フィルタをかけ直す
かけ直したところ ちゃんとG列までフィルタがかかった
※56 かけ直したところ ちゃんとG列までフィルタがかかった

では、フィルタをかけ直したら、G列のところのフィルタを覗いてください※57
Falseが存在しますね。

Falseを抽出
※57 Falseを抽出

この↓商品が、税込計算がまちがってる商品です※58。 1円多くなっちゃってますね。

1円違いました 残念
※58 1円違いました 残念

おおっと! まちがってるからと言って、勝手に直しちゃダメですよ!
報告が先です! ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)、仕事する上で大事ですもんね。




ハイ、今回の課題は以上です。
データをもらったとき、こんなふうにして、計算が合っているかを調査することができます。
今回は税込価格のまちがいが発覚しました。 が、逆に考えれば、調査した甲斐があった、ということです。
こんなふうに、能動的にアクションを起こしていくことが、Excel仕事においては大事なんですよ。
と、いうわけで、今日やった内容、どこかで役に立つと思いますので、覚えておいていただけたら。
ということで、シーユーアゲン!

Copyright(C)森田表計算